料理家・榎本美沙さんとつくるシャツ

料理家 / 発酵マイスターの榎本美沙さん。
実は、以前からentwaの服を選んでくだっているおひとり。
そして、私もずっと榎本さんのレシピ本を集めていました。

榎本さんのレシピが好きな理由は、目新しさや、話題のためではなく、毎日の生活のなかで、何度もつくりたくなる料理だから。

以前、榎本さんから“ひじきの煮物のように、ずっと残っていくレシピをつくりたい“と伺い、その言葉がとても心に残りました。

季節のものを大切にしながら、毎日の生活にしっかり馴染み、長く付き合っていけるものをつくる。
その姿勢は、entwaが服づくりで大切にしてきたことにも、通じるものがあるように思います。

どこまでも自然体でやわらかな空気をまといながら、芯の強さを感じる榎本さん。
一緒に服をつくったら、どんなものになるんだろう。
そこから、この一着の服づくりがはじまりました。(神谷)

#01 どんなシャツにしたい?

服を選ぶ理由は、年齢や暮らしとともに、少しずつ変わっていく。
たくさん着て、たくさん失敗して。
自分に必要なものも、心地いいと思えるものも、少しずつわかるようになる。

そうして選ぶ服には、その人が大切にしていることが、自然とあらわれるように思います。
何を着るかは、どんなふうに毎日を過ごしたいか。
デザインのことだけではなく、たくさんの話をしながら榎本さんとの服づくりはスタートしました。

#02  この一着に込めた、いろいろなこと

「服も料理も、おもしろさは無限大」
そんなことを話しながら、一枚のシャツができあがるまでに、何度も着て、修正して、また考えて。

襟のかたちも、袖の長さも、ちょっとしたディテールにも、「こうだったらいいな」の理由があります。仕上がったシャツを前に、榎本美沙さんに、あらためて聞いてみました。

 #03 Vネックじゃない?カフスじゃない? 

一見すると、すっきりとしたVネックと、端正なカフスのシャツ。 
でも実は、どちらもひと味ちがう“ひそかな仕掛け“があるんです。

首元は、いわゆるVネックではなくスワンネック」
襟元が少しだけ立ち上がり、首筋に沿ってほんなり描くカーブが、とびっきりエレガントな空気をつくってくれます。

デコルテを綺麗に見せながらも露出しすぎない。
この唯一無二の絶妙なラインは、何度見てもため息もの。
人のからだが入ってこそ本領を発揮します。

榎本さんがそのスワンネックをすごく好きでいてくれていたことも、私にとっては本当に嬉しいことでした。

お客様が服を選んでくれたあと、どんな風に感じて着てくださっているか。そのリアルな声を聞く機会はそう多くはありません。

だからこそ今回の企画を通して、もともとentwaを愛用してくださっていた一人としてのメッセージをもらえたことは、私にとってとても贅沢な時間になりました。

そして、袖口は榎本さんといっしょにつくったからこそ生まれたあたらしいデザイン。
本来はカフス(袖先)は別のパーツであとで縫い合わせています。

シャツの歴史を遡ると、昔はその部分だけ取り外して洗えたり、くたびれた時にカフス部分だけを新調できたり……そんな機能的な理由があったそうです。

でも実は今回のシャツは端正なカフスに見えるけれど……実はカフスではなく、生地を大きく折り返した仕様。

なぜそうしたかというと、袖をくるくるっとまくった時のボリュームを抑えるため。
カフス特有のごわつきが出ず、たくし上げたときの手元が驚くほどすっきり収まります。

これは、日々キッチンに立つ料理家の榎本さんたっての希望でした。
私たちも袖のパターンを何度も作り直し、たどり着いた新しい境地。

なにも知らなければ、一着のすっきりキレイなシャツ。でもその奥にはいろんな人の思いが形になっています。
理由を知ると、もっと好きになる。
そんな一着になれたら嬉しいです。

 榎本美沙(えのもと みさ)

料理家/発酵マイスター/国際中医薬膳師

発酵食品、旬野菜を使ったシンプルなレシピが好評で、雑誌、テレビなどで活躍中。オンライン料理教室「榎本美沙の料理教室」主宰。登録者数41万人を超えるYouTube「榎本美沙の季節料理」、Instagram(@misa_enomoto)も人気。著書に『かんたん発酵薬膳』(文化出版局)、『はじめてキッチン』(Gakken)など多数。
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