ある日のこと。
家に帰ると、ん…? 庭の様子が何かおかしい。
うちには、ほぼ放ったらかしの小さな庭がある。
そこで今年初めて育ててたミニトマトやスミレ、アサガオの花がなくなっていて荒らされている。小さなビニールポットはいくつも倒れている。
▲この青々とした草花が一気になくなっていた
あれ、なんで?!
カラスか何かの鳥に食べられた?
と思ってあたりを見渡すと、侵入者と目があった。
シカ…だ…。
普段は奈良公園にいるシカが、いる。うちの庭にいる。
びっくりしすぎて、こういう時はどうしたらいいんだっけ? と考えるも頭がフリーズしてよくわからない。
向こうも人がいることにびっくりしたのか、固まっている。
とりあえず、とっさに庭も隣り合わせになってるお隣のSさんに電話する。
私「い、今、庭にシカがいますっ…!!」
Sさん、落ち着いた声で
「…あぁ…またやね」
「え? え、また…って…?どういうことですか??」
「いやー…シカ来るの、初めてじゃないのよ。昨日も来てたし。実は、去年もその前の年も来てたよ。そうかぁ、見たの初めてやったんやね」
「……」
そうなのか。初めてじゃなかったのか。
私と目が合ったのが初めてだっただけで、向こうはすでに勝手知ったる庭だったのか…!
衝撃の事実を聞いて私が呆然としている間に、シカさんは今のうちにと思ったのか、タッタターと玄関の方に走っていってうちから出て行ってしまった。
静かになった庭を改めて眺めたら、しっかり置き土産があった。
コロコロしたたくさんのフンだった。
シカを近所で見ることはしょっちゅうだけど、まさか自分の家の庭で出会うとは思わなかった。
確かに放ったらかしてるから、草ぼうぼうだし、ここも奈良公園の続きと思ったのか。
癖のあるドクダミも食べてるし。
エライもので? 葉っぱや茎だけ食べて、根っこまでは引っこ抜かない。
根っこは残っているから、またしばらくしたらツボミを持ち、花も咲き始める。
実際、アサガオもトマトも復活した。
シカたちにしたら、必要な量だけ食べて、また放っておいたら草は育ってきてまた食べに来られるワケか。
うーん。うまくできている。
感心する。
感心する…けど、また食べられたら困るなぁ。
その後もSさんと話して、とりあえずお互いに車のシャッターは閉めて出かけることにしよう、閉めてても入ってきたら、それはそれで仕方ないと諦めよう、ということになった。
近所で散歩中のシカを見たら、「うちの庭は大丈夫かな? 」と思うようになった。
シカを見る目が変わった今年の夏である。
(文章真ん中くらいの庭でのシカ写真は、後日Sさんからいただいたもの。ご好意で載せさせていただいてますー。どう見てもファミリー御一行様(笑))