食器の片付けをしていたら、30年ほども前に買っていたガラスの花器が出てきました。
数年前までは出番も多く、サラダや、季節の花をあしらって楽しんでいたのに、奥にしまい込んですっかり忘れていたなんて。
吹きガラス工場に勤めていた職人さんの試作品で、不思議なことにどんな花も、美しく見せてくれる。
深い藍色のガラス。
久しぶりに目にして色々な思いが浮かんできた。
彼は、会社の商品を、丁寧に丁寧に作っていました。
吹きガラスで手づくりなのに、少しでも空気が入ったり、ゆがんだりしたら規格外で捨てられる世界です。
決められた事を守り、自分にも厳しく。
デパートの、装飾売り場にいつも並んでいた彼の商品。
当時の私には、綺麗すぎて心惹かれることがなかった。
手にしたのは、規格外れになった面白い形の物がほとんど。
そんな工場に文系出身の大学を出たばかりの青年が見習いに入ってきました。
彼はとても感性が豊かで、吹きガラスの技術を身に付けるとすぐに独立してガラス作家として旅立って行きました。
ある日職人の彼がポツリと言いました。
感性が……。
色々な思いがあるのでしょう
あまり話をしない彼の一言が、今も忘れられません。
選択はいくらでも出来る。
生き方も選べる。
定年退職して家族で、九州に戻った彼。
ゆっくり農業を楽しんでいると聞いています。
二人の吹きガラスを並べてみた。
どちらもやっぱり素晴らしい。
でも、冷たいまで透明感のある、凛とした、職人気質のガラスが気になってきたのはなぜでしょうか?
年を重ねたせいかしら? なんてね!
(ムラカミ)